今さら聞けない事業再構築補助金の基本
事業再構築補助金とは思い切った事業再構築をしようと試みる中小企業の手助けをするための補助金です。
経済産業省のHPでは以下のようなパンフレットが展開されています。
出典:経済産業省「事業再構築補助金」
経済産業省が実施する補助金となっていて「新分野展開や業態転換、事業・業種転換等の取組、事業再編又はこれらの取組を通じた規模の拡大等を目指す企業・団体等の新たな挑戦を支援」することが目的となっています。
令和2年度第3次補正予算に「中⼩企業等事業再構築促進事業」として1兆1,485億円という大規模な予算で組み込まれたことで話題となったので、
当時補助金を調べた機会がある方は記憶がある方もいらっしゃるかと思います。
事業継続が難しくなったコロナ禍において、新しい事業展開を検討する中小・中堅企業向けの補助制度として注目されている補助金の1つです。
事業再構築の主な要件
①売上が減っている。
②事業再構築に取り組む目途が立っている。
③認定経営革新等支援機関と策定した事業計画がある。
※詳しくは公募要領をご参照ください。
事業再構築指針とは?
事業再構築補助金を申請する場合、上記の通り事業再構築に取り組む必要性があります。
何が事業再構築に当たるのかを定めているのがこの「事業再構築指針」です。
ざっくり簡単に説明すると、「事業再構築補助金」はやろうとしている事業再構築が、
「新分野展開」「事業転換」「業種転換」「業態転換」「事業再編」の5分野のどれかに当てはまらないと申請が出来ません。
事業再構築補助金の申請準備
①電子申請の準備
②事業計画策定の準備
③認定経営革新等支援機関との相談
それぞれご説明します。
①電子申請の準備
事業再構築補助金の申請はすべて「jGrants」という電子申請システムで受け付けが行われます。
そのため、こちらのIDを発行しておく必要があります。
このjGrantsのID「GビズIDプライムアカウント」は発行までに時間がかかるため、お早目に申請しておくことをおススメします。
以下のHPより必要事項を記載して、必要書類を郵送することでやっと作成ができます。
https://gbiz-id.go.jp/top/
ホームページの手続きだけでは申請が完了しませんのでご注意ください。
②事業計画策定の準備
申請には事業計画書が必須となりますので、事前に作成をしておきましょう。
どの程度のものを作成すべきかですが、「できる限り詳細に」すべきです。
最終的には他社と比較される可能性もあるので、少なくとも以下のa~cはやっておくべきです。
a,現在の企業の強みと弱みの分析と新しい事業の市場分析
b,自社の優位性の確保に向けた課題設定と解決方法の提示
c,優位性の確保するための資金計画
③認定経営革新等支援機関との相談
②で作成する事業計画は認定経営革新等支援機関が認めたものである必要があります。
そのため、事業計画がある程度出来たら認定経営革新等支援機関に相談しておきましょう。
【第12回公募】
・【成長分野進出枠(通常類型)】中小企業者等、中堅企業等ともに:
[従業員数 20 人 以下] 100 万円~1,500 万円(2,000 万円)
[従業員数 21~ 50 人] 100 万円~3,000 万円(4,000 万円)
[従業員数 51~100 人] 100 万円~4,000 万円(5,000 万円)
[従業員数 101 人以上] 100 万円~6,000 万円(7,000 万円)
※1()内は短期に大規模な賃上げを行う場合
※2廃業を伴う場合には、廃業費を最大2,000万円上乗せ
・【成長分野進出枠(GX進出類型)】
《中小企業者等》
[従業員数 20 人 以下]100 万円~3,000 万円(4,000 万円)
[従業員数 21~ 50 人]100 万円~5,000 万円(6,000 万円)
[従業員数 51~100 人]100 万円~7,000 万円(8,000 万円)
[従業員数 101 人以上]100 万円~8,000 万円(1億円)
《中堅企業等》
100 万円~1 億円(1.5 億円)
※()内は短期に大規模な賃上げを行う場合
・【コロナ回復加速化枠(通常類型)】中小企業者等、中堅企業等ともに:
[従業員数 5 人 以下]100 万円~1,000 万円
[従業員数 6 ~20 人]100 万円~1,500 万円
[従業員数 21~50 人]100 万円~2,000 万円
[従業員数 51 人以上]100 万円~3,000 万円
・【コロナ回復加速化枠(最低賃金類型)】中小企業者等、中堅企業等ともに:
[従業員数 5 人 以下]100 万円~ 500 万円
[従業員数 6 ~20 人]100 万円~1,000 万円
[従業員数 21 人以上]100 万円~1,500 万円
・【サプライチェーン強靱化枠】
補助金額 1,000 万円 ~ 5億円以内 ※建物費がない場合は3億円以内
※上乗せ措置
・【卒業促進上乗せ措置】
各事業類型(A)~(D)の補助金額上限に準じる。
・【中長期大規模賃金引上促進上乗せ措置】
100 万円~3,000 万円
事業再構築補助金の補助率
【第12回公募】
・【成長分野進出枠(通常類型)】
中小企業者等 1/2(2/3)
中堅企業等 1/3(1/2)
※()内は短期に大規模な賃上げを行う場合
・【成長分野進出枠(GX進出類型)】
中小企業者等 1/2(2/3)
中堅企業等 1/3(1/2)
※()内は短期に大規模な賃上げを行う場合
・【コロナ回復加速化枠(通常類型)】
中小企業者等 2/3(※1)
中堅企業等 1/2(※2)
(※1)従業員数 5 人以下の場合 400万円、
従業員数 6~20 人の場合 600万円、
従業員数 21~50 人の場合 800万円、
従業員数 51 人以上の場合は1,200万円までは 3/4
(※2)従業員数 5 人以下の場合 400万円、
従業員数 6~20 人の場合 600万円、
従業員数 21~50 人の場合 800万円、
従業員数 51 人以上の場合は1,200万円までは 2/3
・【コロナ回復加速化枠(最低賃金類型)】
中小企業者等 3/4(※ 一部 2/3)
中堅企業等 2/3(※ 一部 1/2)
(※)「補助対象事業の要件【コロナ借換要件】」を満たさない場合。
・【サプライチェーン強靱化枠】
中小企業者等 1/2
中堅企業等 1/3
※上乗せ措置
・【卒業促進上乗せ措置】
中小企業者等 1/2
中堅企業等 1/3
・【中長期大規模賃金引上促進上乗せ措置】
中小企業者等 1/2
中堅企業等 1/3
※都度変更になる部分はございます。詳しくは最新の概要をご確認ください。
事業再構築補助金の補助対象
建物費
①専ら補助事業のために使用される事務所、生産施設、加工施設、販売施設、検査施設、
共同作業場、倉庫その他事業計画の実施に不可欠と認められる
建物の建設・改修に要する経費
②補助事業実施のために必要となる建物の撤去に要する経費
③補助事業実施のために必要となる賃貸物件等の原状回復に要する経費
機械装置・システム構築費
①専ら補助事業のために使用される機械装置、工具・器具(測定工具・検査工具等)の
購入、製作、借用に要する経費
②専ら補助事業のために使用される専用ソフトウェア・情報システム等の
購入・構築、借用に要する経費
③①又は②と一体で行う、改良・修繕、据付け又は運搬に要する経費
技術導入費
本事業遂行のために必要な知的財産権等の導入に要する経費
専門家経費
本事業遂行のために依頼した専門家に支払われる経費
運搬費
運搬料、宅配・郵送料等に要する経費
クラウドサービス利用費
クラウドサービスの利用に関する経費
外注費
本事業遂行のために必要な加工や設計(デザイン)・検査等の一部を
外注(請負、委託等)する場合の経費
知的財産権等関連経費
新製品・サービスの開発成果の事業化にあたり必要となる特許権等の知的財産権等の
取得に要する弁理士の手続代行費用や外国特許出願のための翻訳料など
知的財産権等取得に関連する経費
広告宣伝・販売促進費
本事業で開発又は提供する製品・サービスに係る広告(パンフレット、動画、写真等)の
作成及び媒体掲載、展示会出展(海外展示会を含む)、セミナー開催、市場調査、
営業代行利用、マーケティングツール活用等に係る経費
研修費
本事業の遂行のために必要な教育訓練や講座受講等に係る経費
廃業費
※市場縮小要件を満たすことで【成長分野進出枠(通常類型)】に申請し、
既存事業の廃止を行う場合のみ
①廃止手続費
(既存事業の廃止に必要な行政手続を司法書士、行政書士等に依頼するための経費)
②解体費
(既存の事業所や事業において所有していた建物・設備機器等を解体
及び廃棄する際に支払われる経費)
③原状回復費
(既存の事業所や事業において借りていた土地や建物、
設備機器等を返却する際に原状回復するために支払われる経費)
④リースの解約費(リースの途中解約に伴う解約・違約金)
⑤移転・移設費用
(既存事業の廃止に伴い、継続する事業を効率的・効果的に運用するため、
設備等を移転・移設するために支払われる経費)
注目したい補助対象
【機械装置・システム構築費】
機械装置・システム構築費では以下のような項目が申請できます。
・専ら補助事業のために使用される機械装置、工具・器具(測定工具・検査工具等)の
購入、製作、借用に要する経費
・専ら補助事業のために使用される専用ソフトウェア・情報システム等の
購入・構築、借用に要する経費
・上記と一体で行う、改良・修繕、据付け又は運搬に要する経費
コロナ禍で店舗の売上が減ってしまった店舗が、ECサイトを導入する場合のシステム構築費、サービス利用料を申請することが出来ると考えられます。
ただし、システム構築をしたエンジニアの人件費は申請対象とならないので注意が必要です。
【広告宣伝・販売促進費】
広告宣伝・販売促進費では以下の内容が対象となります。
・本事業で開発又は提供する製品・サービスに係る広告(パンフレット、動画、写真等)の
作成及び媒体掲載の経費
・展示会出展(海外展示会を含む)、セミナー開催、市場調査、営業代行利用、
マーケティングツール活用等に係る経費
広告宣伝・販売促進費については、数字で説明出来る部分が大きいため事業計画に入れやすく、「合理的で説得力のある事業計画を策定」しやすいので、どの企業でも検討すべき申請費用の1つです。
【研修費】
最後に「研修費」です。以下の内容が経費として申請出来るとしています。
・本事業の遂行のために必要な教育訓練や講座受講等に係る経費
主に新事業にかかるノウハウや実務上の研修を行う場合に活用できる経費です。組織力の底上げを図ることもできるため、使い方次第では広告宣伝・販売促進費と同じくメリットの大きい経費区分となります。