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キリン・サントリー統合、引き金は国際企業への脱皮

食品業界の「勝ち組」とされるキリンホールディングスとサントリーホールディングスが経営統合に向けて交渉に入った背景には、国内でさらに強固な収益基盤を築き、海外市場でM&A(企業の合併・買収)を通じて積極的な攻勢に出る狙いがある。

 両社合算の連結売上高は米飲料事業最大手のペプシコや米総合食品大手のクラフト・フーズに肩を並べる規模になるとはいえ、最終利益は合算でもペプシコの約5分の1の1122億円。利益面でも欧米勢に追いつくには国内市場依存の構造を見直す一方、成長の期待される海外進出が急務となっており、両社の「婚約」成就には真の国際企業への"脱皮"がかかっている。

 平成20年12月期連結決算で両社はともに最終利益が最高を更新するなど、それぞれ単独で生き残れる力を持っている。しかし、世界市場でさらに成長を目指すには、先手を打つ形で国内で再編に踏み切る必要があると判断。少子化などの影響で国内のビール類市場が20年まで8年連続で縮小したほか、清涼飲料市場も漸減傾向が続くといった経営環境への危機感も後押しした形だ。

 食品を大量に取り扱う流通業界はセブン&アイ・ホールディングスとイオンを軸に再編が進む一方、食品業界の再編スピードは遅いため、流通側の価格交渉力が増すなど食品各社は守勢に回りつつある。景気低迷でデフレ色が強まる中、こうした状態が続けば、欧米メーカーに比べて低い利益率がさらに悪化しかねないわけだ。

 欧米勢との真っ向勝負を挑むため、キリンは近年、アジアや豪州での買収戦略を加速。豪州のビール大手ライオンネイサンを傘下に収めたほかフィリピンでもビール最大手、サンミゲルビールへの出資を決めた。サントリーも今年に入り、ニュージーランドの飲料2位のフルコアを買収したほか、タイや中国への進出を加速している。今後、キリンとサントリーは国内事業の効率化で浮いた資金をより一層海外に配分し、競争力を磨きたい方針だ。

 国・地域によって好みの違いが出やすい食品業界では、地元にしっかりした基盤を持つ大手企業の買収が効果的とされる。キリンとサントリーが開拓余地の高いインドやロシアといった新興国に積極的に進出し、欧米大手のシェアを取れるかが世界市場での「勝ち組」になれるかのカギを握りそうだ。

 上場企業のキリンと非上場で同族会社のサントリーとの組み合わせだけに、交渉入りについて食品業界の関係者には驚きの声も少なくない。ただ、両社の交渉入りが同業他社の再編を促す可能性も高く、その行方次第で食品・飲料各社の優勝劣敗が鮮明になりそうだ。

記事タイトル記事タイトル記事タイトル(産経新聞)

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